これまで、決算書の「利益の5兄弟」や「高配当株のワナ」について解説してきました。 しかし、ウォール街のプロ投資家たちの間では、こんな有名な格言があります。
「利益は意見だが、キャッシュ(現金)は事実である」
実は、決算書の「利益」というのは、会計のルールを使えばある程度”お化粧”ができてしまいます。しかし、銀行口座にある「現金」だけは絶対に嘘をつきません。
そこで今回は、すべての投資家が行き着く究極の指標、「フリーキャッシュフロー(FCF)」について、日本一やさしく解説します。なぜこれが「最強の指標」と呼ばれるのか、その理由を知れば投資のレベルが劇的に上がりますよ!
フリーキャッシュフロー(FCF)って何?
フリーキャッシュフローを直訳すると、「自由に(フリー)使える現金(キャッシュフロー)」です。
私たちの家計に例えると、とても簡単です。 毎月のお給料(手取り)から、家賃や食費などの「絶対に生きていくために必要なお金」を引いた後に残る、「貯金したり、趣味にパッと使えるお小遣い」のことです。
会社の決算書(キャッシュフロー計算書)では、以下の式で計算されます。
FCF = 営業CF + 投資CF ※CF=キャッシュフロー
- 営業CF(お給料): 本業のビジネスで「実際にいくら現金が入ってきたか(プラス)」
- 投資CF(生活維持費): お店や工場を維持・成長させるために「いくら現金を使ったか(マイナス)」
本業で稼いだ現金から、どうしても必要な設備投資などの支払いを済ませて、「最終的に会社の金庫にいくら現金が残ったか?」を表すのがFCFです。
なぜ「FCFが最強」と言われるのか?(3つの理由)
数ある指標の中で、なぜプロ投資家はFCFを最も重視するのでしょうか。それには3つの明確な理由があります。
理由①:恐ろしい「黒字倒産」を見抜けるから
「利益が過去最高なのに、会社が倒産した」というニュースを見たことがありませんか?これを黒字倒産と呼びます。
なぜそんなことが起きるのでしょうか。 例えば、あなたが1億円の商品を売ったとします。決算書には「1億円の売上(利益)」が記録されますが、取引先から現金が振り込まれるのが「3ヶ月後」だったとします。 もし明日、仕入れ先への支払いや銀行への返済で「現金5,000万円」が必要になったらどうなるでしょう? 帳簿上は1億円の黒字でも、手元に現金がないため支払いができず、会社は倒産してしまいます。
つまり、会社を殺すのは「赤字」ではなく「現金の枯渇」です。FCFを見ていれば、「帳簿上は黒字だけど、実は現金がスッカラカンで危ない会社」を一発で見抜くことができます。
理由②:会計の”お化粧”が通用しない「嘘発見器」だから
前回学んだ「営業利益」や「純利益」は、合法的に見栄えを良くすることができます。 例えば、建物の「減価償却費(数年に分けて経費にするルール)」の期間を調整すれば、今年の利益を少し多く見せることも可能です。
しかし、FCFは「今、本当に銀行口座にある現金」だけをカウントします。どんなに優秀な会計士でも、無い現金をあるように見せかけることはできません。FCFは、その会社が本当に稼ぐ力を持っているかを測る「嘘発見器」なのです。
理由③:「本物の高配当株」かどうかが分かるから
前回の記事で、身を削って配当金を出す「タコ足配当」の危険性を解説しました。このタコ足配当を見抜く時にもFCFが最強の武器になります。
会社が株主へ配当金を払うのは、金庫に残った「FCF(自由に使える現金)」の中から支払うのが大原則です。 もし、FCFがマイナス(現金が減っている)なのに、高い配当金を出し続けている会社があったらどうでしょう? それは間違いなく、過去の貯金を切り崩したり、新しく借金をして配当を払っている「タコ足配当」です。FCFを見れば、本当に安全な高配当株を自信を持って選べるようになります。
初心者はココだけ見よう!FCFの読み解き方
実際に企業の「キャッシュフロー計算書」を見る時は、細かな数字を追う必要はありません。以下の「プラス・マイナスの組み合わせ」だけをチェックしてください。
【超優良企業の黄金パターン】
- 営業CFが「プラス」(本業でしっかり現金を稼いでいる)
- 投資CFが「マイナス」(将来のためにしっかり設備投資している)
- FCF(合計)が「プラス」(それでも現金が余っている!)
FCFが毎年安定して「プラス」の会社は、その余った現金を使って「新しいビジネスを始める」「借金を返す」「株主に配当金を増やす(増配)」といった、会社をさらに良くするアクションを打ち続けることができます。これが長期的に株価が上がっていく企業の正体です。
※注意点:成長中のスタートアップ企業などは、稼ぎ(営業CF)以上にガンガン工場などを建てる(投資CF)ため、FCFが一時的にマイナスになることがあります。これは「前向きなマイナス」なので一概に悪いわけではありません。
まとめ
「利益は意見、キャッシュは現実」
どんなに決算書の利益が美しくても、金庫に現金(フリーキャッシュフロー)が残らなければ、会社は成長も株主還元もできません。
「利益の5兄弟」で会社のビジネスモデルを把握し、「EBITDA」や「FCF」でごまかしの効かない「現金を稼ぐ力」をチェックする。ここまで出来るようになれば、あなたはもう立派な中級投資家です!
次に気になる銘柄を見つけたら、ぜひ「この会社のFCFはプラスかな?」とチェックする習慣をつけてみてくださいね。

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